2014/04/14

水辺の景勝地とされた──王子

2014.3.22【東京都】──「隅田川を歩く_4」

 前回のお花見レポートを先に掲載したため、季節は開花前に逆戻りします。


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王子駅周辺(Map)

 右は飛鳥山公園から王子駅南口に通じる跨線橋。
 上野〜赤羽付近の線路は高台下の斜面際を通るので、結構眺めのいい跨線橋があったりします。

 下は王子駅付近の旧石神井川に架けられた音無橋(1930年:昭和5年)で、足下は渓谷のような景観です。
 武蔵野台地の水を集めた石神井川が、台地のふちを浸食し隅田川方面へ下る水路が王子七滝を生み出しました。
 おそらく等々力渓谷のような景観だったでしょうが、洪水対策として飛鳥山の下にバイパスを通したように、橋下の音無川親水公園は、防災対策万全で野趣のない公園として整備されました。
 人工的に配した岩が渓谷的にも見えますが、ここの売りは川底から見上げたこの橋の姿でしょう。


 王子という地名由来は、付近の王子神社に祭られる熊野権現(若一王子(にゃくいちおうじ):熊野古道では九十九王子の社(神社)が道しるべとなる)の神様で、白馬の王子様ではない。
 王子製紙の創業地ですが、立地には水の恩恵よりもオーナーである渋沢栄一村(王子周辺:飛鳥山に旧邸が残る)以外の選択肢は無かったのでは……


 上は酒類総合研究所東京事務所で、醸造試験所として設立当初(1904年:明治37年)は大蔵大臣所轄(2001年まで国税局管轄〜現在独立行政法人)だったように、酒に税はついて回りますが、わが国では室町時代に始まったらしい。
 税金の話はいまどき触れたくないので、以上(レンガ造りの建物を紹介したかった)。


名主(なぬし)の滝(Map)

 ここは江戸時代、王子村の名主が屋敷に滝を造り、避暑の季節に一般開放したのが始まりとのこと。
 後に(上野)精養軒が買収し、食堂やプールが作られましたが空襲で焼失します。
 石神井川の浸食から生まれた「王子七滝」は、浮世絵にも描かれる景勝地でしたが、現存するのは地下水を水源とするここだけとなります。
 現在は名主の滝公園とされ、サギの姿も見られる。

 右の男滝(おだき:落差8m)には、23区内で最も流量の多い滝ではないかという存在感があります。
 他の流路は枯れ気味ですが、夏〜秋の増えた姿に「地下水の季節感」知り、水にまつわる環境への関心が高まれば、この公園の意義が伝わったと言えそうです。

 看板に「滝を登らないで」とありますが、沢を登っていた学生時分ならノリで取りついたかも知れませんが、ここを登りたがるのは子供か、花見の酔っぱらいくらいでは……


北区中央図書館・中央公園(Map)


 日露戦争(1904〜05年)当時、兵器弾薬等増産のため周辺に兵器工場が集約され、王子〜赤羽に至る線路沿いの高台に東京兵器補給廠(しょう)が作られます(赤羽で触れた軍事工場はここまで続く)。
 戦後は当然米軍に接収されますが、TOD(Tokyo Ordnance Depot)時代には戦車練習場や射場があったと聞き、いくら敗戦国でも首都の地で戦車の訓練が行われ、弾が飛び交ったことに驚かされました。
 ベトナム戦争時に建設された王子野戦病院への反対運動による、病院閉鎖〜返還(1971年)の実現が革新系の美濃部都知事時代というのは、とても分かりやすい時代背景です。

 上は旧軍関連施設を北区中央図書館として利用する建物。
 距離的に近い、あらかわ遊園の地に以前あった煉瓦工場のレンガが使用されたのでは? と、つなげて考えたくなります…… そんな地理学的想像って楽しい!


 隣接する北区中央公園では、間引きや枝打ちされた木材をウッドチップにして、園内の林などに散布しており、ほこりは立つが、足裏には暖かみが感じられます。
 上はチップがわたしの背丈より高く積み上げられた様子で、これを「武器よさらば」(旧軍事施設の再利用の姿)と題したら、平和ぼけと言われるだろうか?


追記──研究者・研究機関は、小保方シンドロームを克服できるか?

 研究者は研究対象と戦い、研究機関はライバルとしのぎを削ります。
 研究者は成果のために研究機関に属し、研究機関も成果のために研究者を雇いますから、両者とも一度「倫理」を見失うと短絡的な道に誘惑され、研究者のプライドよりも「成果」を求めてしまうようです。
 この期に及んでも、研究者は社会への説明責任を果たさぬまま「あるんです!」を繰り返し、研究機関は体面を保つため、外部から指摘された部分だけを理由に「不正」の判断を下します(これは中立性を示そうとする責任逃れのずるい大人の態度)。
 そんな状況からは研究機関が有利にも見えますが、ここで問われているのは「論理」ではなく「倫理」であり、研究機関所属の研究者は勝手に論文発表できないことを踏まえれば、「双方とも腐ってる」という評価に反論の余地は無いはずです。
 研究者会見の、まるで理解・信用されずも懸命に持論を繰り返す姿に、「コリン星では……」の主張を続けたタレントの姿を重ねた方も多かったことでしょう。
 あれは所属事務所の戦略ですが、研究機関の戦略はあんな会見だけではないはず……

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