2018/04/02

江戸川区の千本桜

2018.3.31【東京都】──お花見2018 in 江戸川区

 転居から半年が経過し、周辺の環境をほぼ見分したつもりでしたが、初めて迎えた春に桜を見かけないことに気付き、これでは寂しいと近場の花見スポットへ……


 現在暮らす集合住宅は商業地区に接するため、駅までの道筋に緑地はなく駅前にも桜の木はありません(田町駅でさえ海側の芝浦口には植えられていた)。
 車窓からも海側に数本見える程度で、荒川を越えると地下に入ってしまい、下車駅の神谷町もビルの並木ばかりという通勤環境で(移転前は六本木ヒルズで堪能できた)、桜難民を自覚する状況に「ここは日本か?」とも……



 ソメイヨシノは明治期以降、街路樹、河川敷、公園の植え込み等に植えられるようになり、戦後の焼け野原でも若木から花が咲くため、戦後復興のシンボル的存在として爆発的な勢いで全国に植樹されました。
 ですが、当時の西葛西周辺には湿地や水田が広がっており、町として整備されたのは高度成長期のためソメイヨシノ植樹ブームを知らない町になります。
 桜の植樹に消極的に見えた江戸川区も(事前に都の護岸整備が必要だったためか)、区民の要望に後押しされるように2014年新川千本桜を整備します。


 区の広報から盛り上がる様子を想像したが、「江戸川区民は花見が好きじゃないのか?」と感じる静けさに驚きます(翌日が桜まつりのせいか)。
 広い水路の岸に若木が植えられるため、まだ目黒川のように川を覆うような迫力が感じられませんが、木の成長を見守る楽しみがあります。
 上は、新川西水門広場の火の見やぐら(モニュメント)。


 櫓こぎ舟が浮かぶ水路には風情があり、水都を目指すにはいい取り組みと思うが、川岸に並木が続くだけの単調なロケーションなので、30分程度歩くと「もういいか」の気分になります。
 桜の木と同様、名所として盛り上げるために地域で知恵を絞ることから、地元意識と地域振興の活性化ができるのではないか。名所となるかは、これからの取り組み次第。




 ここは江戸川区小松川と江東区大島にまたがる都立大島小松川公園で、季節の活気を体現する子どもたちの姿が、新川千本桜の物足りなさを解消してくれます。
 ですが以前も触れたように、地下には六価クロムを含む鉱滓(こうさい)が埋まっており、『風の谷のナウシカ』で描かれた腐海のように、木々が汚染された土壌を浄化してくれるまでには、人の寿命では計り知れない時間が必要になりそうと……

 下の荒川沿いに植えられた並木が小松川千本桜で、土手の緑と桜が引き立てあいます。


 右・下は旧中川河川敷。水上スポーツも本格的な開幕のようで、花が舞い散る水面を漕ぐ姿は気持ちよさそうに。
 一般に名所とされる桜の木は、大きく育ち地面に日が当たらないため下草が生えませんが、緑の上に桜が咲く様はこれからの季節に希望を抱かせる色彩に見えます。

 季節柄「桜ソング」をよく耳にしますが、わたしの頭の中には、竹内まりや『人生の扉:満開の桜や 色づく山の紅葉を この先いったい何度 見ることになるだろう』が流れてきます(以前も書いたと思う)。
 回数が減ることをリアルに感じる前に、毎年の季節感を楽しんでおくべきと思うように……



追記──連続テレビ小説「わろてんか」終了

 最終回の脚本は見事と、拍手をしながら見ていました。
 往々にして回想シーンが登場するところを、戦後の焼け野原の青空舞台で自演し、見る者の記憶から「あった、あった!」と引き出させようとする狙い。
 これまでも時折幽霊のように登場した主人公の亡き夫が舞台上に本人役で登場し、主人公がその応援を活力として戦後を歩みだそうとする姿。
 どん底の暗い気持ちを明るくしたい思いが、吉本新喜劇を生んだことへの賞賛。
 どこをとっても見事でした!