2018/02/19

地盤沈下だけではない──東大島

2018.1.27【東京都】──江戸川区探訪_15

 1930年(昭和5年)造成の荒川(放水路)は当時の町村界に関係なく通されますが、分断された村を含む合併で32年江戸川区誕生の際、西側の江東区との境界が旧中川沿いに設定されたため、荒川を挟み飛び地のような地域があります。


 この日は亀戸行きの都バスに乗り(西葛西→両国や秋葉原行きもある)、車窓から目にした清洲橋通り、新大橋通り等の標識に、江戸市中(隅田川)へ続く道の歴史をうらやましいと。埋め立て地に通された新しい道の名称は、語呂合わせの記号のようで覚えやすくても、文化の香りが感じられません。




 1998年周辺の防災再開発事業により移築されますが、周囲を高層住宅に囲まれる様は城塞都市の守り神のようにも。現実には、災害避難場所の広場に境内の土地も組み込まれるように見えるが、社の存続と地域社会とのつながりには絶好の環境とも。
 上写真、柵の奥中央に白く見えるのは富士山を模した富士塚の碑で、周囲には当時からの石碑が並びます。以前南葛西でも感じた、平坦地に暮らす人々の山へのあこがれ? のようにも(浅間神社は富士山信仰の社)。




 旧中川は荒川放水路の開削により元の流れから切り離された水路で、地盤沈下の影響から水門に守られる池のような存在となり、流れのない水路ではボート競技等の練習が盛んに行われます。
 普段は穏やかな川面も北風が強烈なため、上の艇たちは風で下流へ流される際はおしゃべりしていましたが、帰りは苦労しているように。



 バスで荒川を渡る際に目にした河川敷を走るランナーたちは、東京30K 冬大会(マラソン)参加者と知ります。
 右はメイン会場撤収の様子で、更衣所等の一体型テントはたたむと右の姿に。設営・撤収は手軽でもがさばりそう……

 ここは、江東区・江戸川区にまたがり、災害時に20万人の避難を想定した防災公園として整備されます(1997年)。荒川に面した広い敷地は空が広いため開放感があり、川沿いにある小松川千本桜の樹齢はいい感じに見えるので、花の季節にはまったりできそうです。

 荒川と旧中川に挟まれた小松川1丁目付近だけ土地がかさ上げされるように見えるのは、高潮対策ではなく、前所有者 日本化学工業の、六価クロムを含む鉱滓(こうさい:精錬後の鉱物くず)の廃棄場だったことによります。
 汚染地下水の流出発覚後、都は汚染土壌の洗浄や封じ込めを行うが、その後も汚染地下水の流出は収まりません。
 高度成長期の臨海部一帯は汚染物質の廃棄場とされたらしく、葛西臨海部周辺が死の海と化し漁業が衰退したことも、当時の辺境の地という認識が原因のように。
 汚染物質の流出防止に失敗し対処に追われる都の対応は、都民ファーストどころかSafety Firstすら実現できないように。その甘さが、築地市場の豊洲移転で繰り返されたとすれば、まずは「都職員の学習ファースト」に取り組んでもらわねばと…… 右は、希望を表現する像。



 江戸期付近にあった中川船番所が、夜間の出船や女性・鉄砲の出入りを取り締まったのは、関所と同じ役目かと。
 付近には、水陸両用バス スカイダック(リンク先YouTube)のスプラッシュポイントがあり、この日は客が少ないせいか、中華系家族の旅行者が貸し切りで乗車 or 乗船(?)していました。
 はとバスのコースにありそうでも、近ごろは細かな情報まで調べる旅行者が増えたため、その恩恵は地方まで行き届きそうです。 Welcom !  でも通訳が足りないとの声を、新たな雇用機会と考えれば、別の芽も生まれそうと。




 荒川ロックゲート(2005年)は、荒川と旧中川を結ぶ閘門(水位の違う水路間の船を航行させる施設)で、災害時の水上交通を確保するため、阪神大震災クラスの地震に耐えられる設計とのこと。
 前回訪問時も迫力ある施設と感じたが、ゼロメートル地帯に暮らすようになると「頼りにしてまっせ!」という存在に見えてきます。

 下は、荒川放水路開削時に荒川・旧中川間の水位調整のために作られ、大島小松川公園に保存される旧小松川閘門。
 以前は、2枚下の旧江戸市中へと続く小名木川の正面に旧小名木川水門がありました。


 右の小名木川は、徳川家康が塩を確保するため行徳塩田まで開削した運河ですが、きれいな姿で残されているので現在は観光船のルートになっているそう。

 都営地下鉄 新宿線が東大島〜船堀駅間の荒川を高架橋で越える理由を、周辺の地盤沈下が著しいためと理解していましたが、付近に埋められた汚染土壌を避けるため高架にしたのではないかと。地下鉄構内に汚染地下水が流れ出したら、電車はストップしてしまいます……

 今回は、転居によりゼロメートル地帯が身近に感じられるようになった、をテーマにするつもりでしたが、周辺に有害物質がまき散らされたことを知り、うちの団地のまとまった土地も怪しいと思うように。
 経緯を知らない庶民は、家賃が安く暮らしやすい地域を求めて集まりますが、物価の安い理由を知るとちょっと考えてしまいます……

 そんな不信感が高まったところで、江戸川区探訪は終了になります。


追記──羽生結弦 冬季五輪2連覇! 不可能と思っていました(大変失礼)

 昨年負傷したシーンがテレビで何度も流れたが、目をそらすほどのケガに見えました。
 五輪に挑む際の「現在可能な準備はした」に、ベストではないと感じたが、彼が自信を持てるレベルであったことに(痛み止めを使ったとはいえ)驚かされました。
 アイドルのような受け答えはファンに対する感謝としても、23歳でプーさんのぬいぐるみでは疑いたくなります。

 一方、長野五輪の清水宏保のように気合いに満ちたオーラ(リンク先YouTube)が感じられた小平奈緒の表情には、イケそうな雰囲気を感じました。短距離の金メダルを狙うには、獲物を狙うようなハングリーさが必要なのだと。
 本当に速かったし、五輪記録を祝福する観客に向け、次のレース競技者への配慮求める姿勢は、スポーツマンシップの体現者の姿として記憶に残ることと……

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