2009/03/24

埋め立て地に見る夢──新木場、葛西臨海公園

2009.3.12_15
【東京都】

 夢の島公園(Map)

 子どもの時分によく目にした「夢の島」のイメージは「ゴミの島」であり、はるか遠い海にあるという印象でした。
 その取り上げられ方は、高度経済成長期の「負の側面」としてのとらえ方が主流で、時代の流れに乗り損ねた「落ちこぼれ」がもがく場であったり、「東京の掃きだめ」の象徴として扱われていた記憶が強く残っています。
 映画にはよく登場していましたし、テレビドラマでも死体を入れたドラム缶を置き去るシーン(傷だらけの天使)が思い出されます。
 それが現在の「新木場」周辺だなんて「夢の島」も近くなったものだ(?)との印象があります(湾岸ではなく、元から陸地だった場所を経由すると結構遠い)。
 埋め立て地は現在公園施設として整備され、野球場、陸上競技場、スポーツ文化館(アリーナ、温水プール等)が広がっています。
 ポジティブにとらえれば、大量のゴミも「大地としてリサイクルされている」と言えるかも知れませんが、「ゴミの島」のイメージを引きずる者には、そんな「たくましさ」をゴキブリと比較したくもなってきます。

 第五福竜丸というマグロ漁船の名を耳にしたことがあるのではないかと思います。
 1954年(昭和29年)3月1日マーシャル諸島近海で操業中、ビキニ環礁で行われたアメリカの水爆実験に遭遇し、放射性降下物(死の灰)に被曝(間接被爆)してしまった船です。
 何でここに展示されているのかが不思議だったのですが、ゴミ捨て場であった当時の夢の島に捨てられていたところを発見されたからだそうです。
 船をゴミ捨て場に捨てようとの考えにも驚きますが、当時の「夢の島」には他にもとんでもないモノが埋められたであろうことは、容易に想像できます。お宝があったとしてもそれだけは持ち去られたことでしょう。
 そんなことを引っくるめた、昭和という「時代遺産の展示場」としては、この地ほどふさわしい場所は無いのかも知れません(批判的な意見ではありません)。

 気を取り直して。
 ここには「熱帯植物館」という温室があり、沖縄の八重山諸島や小笠原諸島の植物を育てていたりするので、趣旨としては納得できる施設ではあります。
 右写真はオウギバショウ(マダガスカル原産)、下写真は食虫植物(モウセンゴケの仲間で、日本で見られるそうです)。
 規模としてはそれ程大きな温室ではないことと、この公園では盛んに、枯れ葉や枯れ木を積んで新しい土壌を作ろうと努力している(頑張っても表面だけですが)様子から、この公園自体が実験施設だったりして? などと思ったりもします。
 以前、この沖側にあるゴルフ場から有毒ガスが噴出しているとのニュースを聞きましたし、地下からの排気口はガス抜き用かと勘ぐったりしていると、あまりいいイメージが浮かんできません。
 ゴミのリサイクルとして埋め立てるのは仕方ないとしても、その後どのように活用していけばいいのでしょうか?

 調べると、江戸時代からゴミを海岸の埋め立てに利用(現在とは比較にならない程度の量でしかない)しており、ゴミは越中島(前回の佃島の対岸)に集められたそうです。
 そこが当時の「夢の島」だったようですが、明治時代には欧米列強に対抗すべく軍隊の訓練場とされたそうです。
 これも軍艦配備等の要請でしょうか、隅田川河口に堆積した土砂により船舶航行に支障が生じたので、大規模な浚渫工事が行われ、これによって発生した大量の土砂を利用して、月島、晴海、辰巳から豊洲に及ぶ一連の埋立が行われたそうです。
 追伸として、有明や青海(お台場)また京浜地域の埋立地などは、東京港の港湾整備のため大規模な埋立造成により生まれたそうです。




 葛西臨海公園(Map)

 東京ディズニーランド(千葉県浦安市)を江戸川の対岸に望む都営の公園で、大観覧車とマグロの回遊水槽のある水族園が知られています。
 それらの施設を利用しなければ無料なので、対岸の花火を眺めに来るカップルもいるのでは? と思ったら、暴行事件があったとのことなので、気をつけて下さいね。

 この地の埋め立て事業が始まったのは1972年(昭和47年)で、当時地盤沈下により水没した民有地を埋め立てて区画整理をするという、前例の無い事業だったそうです。
 その事業によって、現在では無くてはならないJR京葉線、放射16号(地下鉄東西線と並行する道路)、環状七号線、東京湾岸道路、首都高湾岸線の建設が可能になったことは、首都圏のインフラ整備に大きな役割を果たしたことになります。
 またそのタイミングも絶妙だったらしく、バブル景気による地価上昇の恩恵を受けたばかりか、バブル崩壊前に工事は完了したので、大規模なウォーターフロント開発の成功例と、胸を張っているそうです。


 上写真は「クリスタルビュー」という展望施設で「東京湾を眺めてもなぁ」とは思うものの、温室のような館内では暖かさが心地いい今どきは眠気を誘われたりして、外に出られなくなります。
 下写真は「東京都葛西臨海水族園」で、上下の写真を並べると「グラスハウス風」というか、この公園のデザインコンセプトは伝わるのではないかと思われます。


 開園当時、水族園の売り物であった「マグロの回遊水槽(ドーナツ状の水槽をグルグルと勢いよく泳ぎ回れる)」は仕切られてしまい、大きなマグロたちも行きつ戻りつ泳がされていました。
 以前訪れたとき「マグロは高速で泳がなければ弱ってしまう」と聞かされ、グルグル泳ぐ姿に「なるほどなぁ」と感心させられたものですが、実は大丈夫だったということなのだろうか?
 仕切られた狭い方の水槽には小型のマグロやカツオが泳いでいるのですが、首のあたりが変形している個体も目にするので、狭い水槽の中を高速で泳がせるのは問題があるのかも知れません。

 下写真の黄色く細長いのはヘラヤガラで、浅いサンゴ礁付近に棲息しているらしいのですが、黄色い個体はまれなんだそうです。
 絵的には、タツノオトシゴの仲間であるシードラゴンを撮りたかったのですが、うまく撮れませんでした……


 公園の東側(ディズニーランド側)には「鳥類園」という、バードウォッチングをするための公園があります。
 右写真は野鳥観察用ののぞき窓で、こんな写真を撮っているだけで「何がいるんですか?」と質問されてしまう場所であります。
 奧に観覧車が見えても、ここは東京ですから仕方ないと、あきらめるしかないでしょう。
 ですが千葉県方面には、新浜や三番瀬などの干潟が点在ながら残されているので、昔の東京湾の面影を少しでも残してもらえたらと思います。
 子どものころ潮干狩りに行った幕張海岸には、幕張メッセがドカーン! ですから……

 この公園には都営の「水辺ライン」(お台場や両国方面へ行く観光船)の発着場があります。
 交通手段として当てにしていたのですが「低潮位のため欠航します」の張り紙。生活の足ではない観光船にはこんなこともあるので、お気をつけて。


 貯木場(東雲)(Map)

 現在ゴミ埋め立て地の主役は、下写真右奧の中央防波堤埋立地になり、沖側へズンズン張り出しているようです。
 この勢いでいけば、われわれの目の黒いうちには羽田空港と陸続きになりそうですし、将来は「むかしここに海底トンネルがあったんだよ」なんて、東京湾アクアラインの補修費が不要になるかも知れません。
 左側へ伸びているように見える建設中の橋は「東京港臨海大橋(2011年開通予定)」で、大田区の城南島と江東区若洲を結ぶそうです。
 それを頭に入れて東京湾の地図を見てもらえば一目瞭然です。
 東京湾の埋め立て事業の最前線は、確実に沖合を目指していることが見て取れると思います。
 まだ埋め立て中である「ゴミの島」をめぐり、隣接する行政区の間でその土地の帰属についての争奪戦が始まっているんだそうです。
 その「ゴミの島」は、まだどこの区にも属していませんから「東京番外地」と言うんですって。何だかなぁ〜。
 ちょっとわたしにはそのビジョンが見えないのですが(羽田空港を広げる計画があれば高い建物は作れない)、領土を広げるのは「領主の本懐」であり、それこそが「夢の島」ってやつになるのでしょうねぇ。


 久しぶりの自動車にまつわる明るい話題となった「ETC搭載車の高速料金値下げ」の効果で、アクアラインの海ほたるの駐車場が満車になったと聞きました。
 近所でもおじさんの「ETC付けようと思ってんだ。5千円くらいなんだろ?」という、明るさが伝わってくる会話を耳にしました。
 ──「しまなみ海道」を走った時がちょうど試験運用期間で、まさに現在の消費者のキーワードである「お得感」「割安感」を実感したことがあるので、消費者心理がそこに食いつくのはとても理解できます。

 何だか「地獄にクモの糸」のような明るい話題(給付金は政策などとは言えない小学生の発想)なので、景気回復のきっかけになってもらいたいとも思いますが、皆さんマイカーで排気ガスをモコモコ出して走り回るのもどうかと思われます。
 やはりこの不況脱出のキーは「グリーンエネルギーへの転換」であり、転換後の発展なのかも知れないと、思ったりもします。


●おまけ
 青海(お台場)(Map)

 近ごろ大井町駅(東急・JR・りんかい線)を経由して出かけることが多く、そこで「船の科学館」(青海:あおみ)行きのバスを目にし、これはレインボーブリッジ経由で行くのか? と乗ってみたら、海底トンネル経由でした……
 海底トンネルも高速道路なので、路線バスでもシートベルトが設置されています(している人はいませんが)。
 ひところの勢いは無いものの、お台場には次々とビルが建っています。
 あおるつもりはありませんが、まだまだ空き地はあるのにパレットタウン(観覧車やビーナスフォート等)が閉鎖されることを知りました(確かに仮店舗的な構造物です)。
 契約の問題なのでしょうが、そんな強気でこの先大丈夫なのでしょうか?
 オリンピックがあるさ! なんて考えているとしたら、大けがの元になってしまう気がします……

 右写真は船の科学館脇に係留されている初代南極観測船「宗谷」(1956~1965)と、その奧に懐かしい日本国有鉄道(JNR:Japanese National Railways)ロゴが見える青函連絡船「羊蹄丸」(1965年〜1988年)です。
 この日も子ども連れが多く訪れていましたが、われわれが子ども時分に「ふーん」と思った、横浜に係留されている「氷川丸」のような存在になるのでしょうねぇ。
 結構覚えていたりしますから、続けていただきたいと思いますが、母親を背負った銅像は何とかしてもらいたい……


 上写真は、温浴アミューズメント施設「大江戸温泉物語」(ここも閉鎖予定)裏手の青海埠頭(オレンジの柱は大型クレーン)で、羽田空港への着陸進入路にあたり、次から次へと飛行機が飛んできます。
 最近流行の、人が集まりそうな場所に無理やり作った温浴施設の比較であれば、横浜「万葉倶楽部」の景色の方がいいと思います。
 近場で一番落ち着けると思っているのは、瀬田(世田谷)の「山河の湯」でしょうか(昼寝スペースの広いところが○)。

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