2010/08/23

鉄橋のあったころ──登戸

2010.8.7
【神奈川県】


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 川崎市の多摩川に面した地域には、暴れ川とされた多摩川の氾濫原(はんらんげん:洪水時に河道が氾濫する範囲の平野部)が広がっており、以前は農耕地に利用するための用水路が、網の目のように整備されていました。
 現在は下水路とされ、簡易的なフタをした歩道が、住宅地とされた合間をぬうように残されています。
 コンクリート板のフタが安定しない場所を踏むと「ゴン!」と傾くところに、自治体のいい加減さというか、多すぎて手の回らない状況がうかがえます。


久地円筒分水(くじえんとうぶんすい)(Map)

 ここは、多摩川から取水した二ヶ領(にかりょう)用水を各地域に分配する、久地円筒分水という施設です。
 二ヶ領用水は江戸時代(1611年)に完成し、この一帯では「稲毛米」とされる上質な米が作らたそうです(ガキ時分の印象である果実類の農地は、転作後の光景になります)。


 むかしから、農耕を主ななりわいとして生活してきた民族ですから、水をめぐる争いが絶えなかったことは、容易に想像できます。
 江戸時代にも分水施設はありましたが、その配分率に納得できない農民たちの騒動が絶えなかったそうです。
 1941年(昭和16年)に作られたこの施設は、円形のわき出し口から4方向に分流する先の灌漑面積に応じた比率を、円周の角度で分水しています(上写真で、3方向に分水されているのが分かりますが、それ以外は4番目のメインとなる水路に流されます)。
 角度を測った人もいたと思われる、誰が見ても納得できるようにディスプレイしたところが画期的と思います。
 また二ヶ領用水はこのすぐ手前で平瀬川とクロスする際(一部平瀬川に合流)、平瀬川の下をくぐってここにわき出させています。
 現在は国の登録有形文化財とされますが、もう水争いをする農地は残されておらず、周辺住民の憩いの場(桜の名所が多くある)という役目に変わりました。
 以前水路に沿って歩いたことがありますが、近所の水路は下流のJR南武線鹿島田駅付近で下水に流されているのを目にし、「それはないだろ!」とガッカリしたことがあります……(きれいな水ではないので、仕方ないか)


旧向ヶ丘遊園(Map)

 「何これ?」という、記憶に訴える類の写真なのですが、分かる人もいるのでは? 旧向ヶ丘遊園の、入口正面にあった白い階段の現在の姿です。


 てっきり入れると勘違していて、完全な企画倒れとなりました。
 遊園地の営業は2002年終了しますが、名所とされる「バラ園」だけは、川崎市が近くにある生田緑地の一部とすることで、管理を引き継ぎました。
 そこだけなら入場可能と思っていましたが季節限定だそうで、この時期は完全に閉鎖されていました。
 もうモノレールの軌道も撤去され、記憶をたどるきっかけすら無くなっていました(ガキ時分には、夏はプール、冬はスケートとよく通いました)。

 手前のシート部分では「藤子・F・不二雄ミュージアム(仮称)」の建設が進められています。「ドラえもん」なら受けるとは思うも、通りやすそうな企画書を出したものだ、とも。
 ちゃんと調べずに「あの階段を登るぞ」と気合い入れてもね……


登戸(Map)

 ようやく完成(2008年)した印象のある、複々線の小田急線多摩川橋梁です(登戸〜向ヶ丘遊園駅の下り線は未完成)。
 以前、鉄道の橋は鉄橋と決まっていたので、小田急沿線に住んでいたころは、眠りこけていても鉄橋を渡る音で「登戸だ」(まだ寝られる)と察知できたものでした。
 今どきはコンクリートの橋になってしまい、どこを走っているのか判別できません。

 計画当初はすごい橋ができそうだと思っていましたが、気付いてみれば、東横線や田園都市線はすでに複々線の橋が架けられてますから、小田急には連続複々線化工事(代々木上原〜向ヶ丘遊園)の成果として、混雑率の改善で驚かせてもらいましょう(でも、ラッシュ時の小田急線に乗って確認したくないなぁ。混雑するとされる東横線でも、小田急には及ばないと感じます)。
 
 川岸からのんびり眺めていると、ロマンスカー(全席指定の特急車両)の種類が増えたのと、土曜日のせいか本数が多いことに驚きました。
 ガキの時分には、オレンジ色の2型式しかなかったのですが、ミュージックホーン(パン、パン、パン、パ〜ン♪)が聞こえると振り向いたものです。
 近ごろは騒音とされるらしく、市街地では鳴らさないそうですから、いまの子どもたちは静かにロマンスカーを見送っているのだろうか?


 以前は、休日の多摩川に浮かぶボートがとても楽しそうに見えましたが、この日は川面に浮かぶボートはありません。
 炎天下の川岸では、釣り人も橋の下の日影に集まりますから、ボートをこぎ出すには勇気が必要です。夏場の貸しボート屋は、商売にならないでしょうね。
 今どき「多摩川でボート乗ろう!」なんてデートは流行らないようですが、アベックが乗る手こぎボートには、純朴な可愛らしさが感じられました。
 そんな鉄橋のあったころを振り返ってみると、鉄橋ってスカスカなので日よけにならないし、雨宿りもできなかったことを思い出します(あの騒音をよろこんでいたのか?)。
 それに比べ、コンクリートの橋の下は居住性がいいので、自宅近くの橋の下にはホームレスが寄りついてしまいます。
 子どもの脅しに使われてた「お前は橋の下で拾われて……」も、ピンとこなかったのでしょう、川へ行くと橋の下で遊んだ記憶があるので、ホームレスの気持ちも理解できる気がします(バーベキューの連中にも通じるのか?)。

 川岸には、昔ながらのバラックの飲食店が健在です。
 何だか、川沿いを走ってきた自転車乗りのオッサンたちのたまり場になっていました。
 河川敷(堤防の内側)への新たな出店は認められないようで、二子多摩川の店が堤防工事で撤去された現在、多摩川沿いで存続する店はここの3軒だけかも知れません。
 付近の花火大会は1985年で打ち切られたそうです(見に来た覚えある)。
 理由はあるにしても、花火大会がなくなってしまうと、地元住民の元気も奪ってしまうような気がしてなりません……


2010.8.15

丸子日枝神社(ひえじんじゃ) 山王祭(Map)

 土曜日の午前中、近所の丸子日枝神社「山王祭」の「ピーヒャラ」「ワッショイ」というにぎやかな様子に目を覚ましました。祭り自体は前日の金曜日から始まっていたそうです。
 8月13日(金)が宵宮(前夜祭)、14日(土)が例大祭、15日(日)が大神輿渡御(おおみこしとぎょ:巡行)との日程ですから、「子ども神輿の後に、大人の神輿が通ります」などという、自治会的なイベントではありません。
 担ぎ手たちは気合いの入ったいでたちで「粋さ」をアピールしますし、各町内に「休憩所」が設営され、担ぎ手たちをねぎらう準備が整えられます。

 現在の新丸子周辺の土地柄(通勤に便利なため、古くからの家をマンションに建て替える家が多い)ゆえ、マンションの入口に下写真のちょうちんが下げられたりします(ここは道を挟んだおとなりさんの建物で、ここも建て替え準備をしているようです)。


 日枝神社とは、比叡山麓にある日吉大社から分祀された神社の社号になります(日枝は比叡山の旧名にあたる)。
 809年に、桓武天皇の孫に当たる兄弟が、東方地域を治めるためこの地に「丸子山王権現」を開き、大山咋神(おおやまくいのかみ:山王様)と、大物主神(大国主神:出雲神話に登場する大地を象徴する神)が祭られます。
 神輿のルーツとされる「日吉型渡御祭」(ここでも行われる神輿を激しく振る様式)は、豊作や大漁を願う庶民の流儀で、元は天皇の行幸を模した「王朝型神幸祭」とされるそうです。
 「渡御」には、水のみそぎを受けるイメージがあるので、以前は多摩川に入っていたのかも知れません(現在は行われない)。
 
 近ごろは担ぎ手も、見る側も「目立つ部分」に目を奪われがちですが、海外の方には「神輿=Portable Shrine(持ち運び可能な神社)」と、説明されているそうです。
 その表現の方が本質を示しているように思えますし、その理解からは、迫力はあっても「何て野蛮な人種だろう」(エスニック:民族特有の習慣 とは、こんな時に使われる表現なのでしょう)と思われているかも知れません。

 でも、老若男女が「神様お願い!」(テンプターズを想起してしまうわたし)と大騒ぎする姿にこそ、わたしたちのアイデンティティがあるのかも知れない、とも思います……


P.S. 夏の甲子園で、沖縄の興南高校が春夏連覇しました(東海大相模は地元なので、双方応援していました)。
 ウチナー(沖縄人)へのエールのつもりで、意見を書かせてもらいます。

 彼らは、さぼらなかった、のだと思います。
 それができれば、ナイチャー(本土人)に負けないことを彼らが証明してくれた、と考えていいのではないかと思います。
 ウチナーの人たちは、さぼり癖(失礼)を克服すれば(あくせく動き回れの意味ではない)、ポテンシャルは高い人たちと思うので、球児たちの快挙を自分たちに置き換えて、自信を持って立ち上がるべき時ではないかと思います。
 米軍基地の問題はもはや、やる気のないナイチャーに任せるのではなく、自分たちでコツコツと活動していかないと、いつまでも「なめられたままの存在」に甘んじることになってしまいます(ナイチャーとしてもあきれました)。
 ちょっと過激ですが、琉球が独立したら国籍を変えようかしら、と思ったりもします。
 それは、日本で最も平和を求めている地域のひとつだと思えるから……
 いい機会と思い書きました。

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