2010/09/20

切通しを抜けると……──百草園

2010.9.11
【東京都】


より大きな地図で 多摩川 を表示

 急に涼しくなると、衣替え前に押し入れの開け閉めが増える方も多いのではないでしょうか。
 今回訪問日の、坂を登るにも汗だくになる陽気から一転、週が明けるとフリーフォールのような気温低下があり、またサイトアップ日には再び真夏日がやってきました。
 この一週間の気温変化では、健康な体でも体調を崩してしまいそうですし、これでは何を話題にしていいのか困ってしまいます。
 それは、環境がわたしたちを試そうとする、自然淘汰(とうた)の試練ではないか? と思ったりします。
 とは言え、今週には秋分を迎えます。異常気象も、そこで終わりにしてもらいたいものです。


百草園(もぐさえん)(Map)

 ずっと意識にあった場所ですが、初めての訪問になります。
 足を運んでみると、これまで立ち寄らなかった理由を、身をもって理解できた気がします。
 施設は丘陵地の頂上付近にあり、最寄りの京王線百草園駅からのアプローチは急坂ですし、車を利用するにも駐車場がないので、目的意識がないと足が向かない立地になります。入口からまた階段を上りますしね……
 それにしても駅からの急坂は、雰囲気も何もない無粋な坂道です。

 後述の帰り道ルートからだと、一筋の谷戸(やと:丘陵地が浸食されてできた谷地形)を登り詰めた頂上付近に位置し、百草八幡神社に隣接するので、地域の象徴となる施設が求められる場所柄になります。
 鎌倉時代に建てられたお寺はさびれますが江戸時代に再建され、明治時代には庭園とされたことを、地域では新たなシンボルとしてよろこんだのではないでしょうか。


 上写真奧の左から続く尾根の裏側には京王線や幹線道路が通る、今どきの見慣れた光景が広がります。
 聖蹟桜ヶ丘の隣駅付近にこんな光景が残されているのですから、まだ守るべき多摩丘陵が残されていることに気付かされます。
 酔っぱらって帰ると心臓が破れそうな「駅からの無粋な急坂」周辺や、本施設のすぐ下まで宅地化されていますが、こんな(急傾斜地崩壊危険箇所とされるような)傾斜地に建てられた家でも欲しいのか? と思える場所まで開発が進められています。

 上写真の撮影場所は園内の展望台で、そこの案内が「新宿高層ビル、池袋サンシャインはこちら」だけなのには、ちょっとガッカリです。
 借景にはできなくとも、見えそうな高尾山くらいは紹介して欲しいと思ってしまいます。

 この庭園は「梅の大木:寿昌梅」が有名で、紅葉も売りとされますが、立地にふさわしい山野草的な花々が可愛らしい姿を見せてくれるようにも思います。
 暑い時期に見るべきモノはないだろうとは思いつつも、庭を管理するおばちゃんの「あら、こんにちは」のあいさつもやはり「花のない季節にようこそ」の意味に聞こえ、花以外の被写体を探す心構えができました。

 右上は池の水面を狙った時、偶然目にした魚(コイ?)が起こしたと思われる波の広がる様子です。
 その主の波の立て方が特殊なのか、狭い池のせいなのか、同心円状になる前にユニークな波が見られました。
 でも昔の歌人のように、こころ静かに周囲を観察できたなら、このような絵はいくらでも見つけられるのかも知れません……


 明治時代には文人が訪れるようになり(北村透谷、徳富蘆花など)、中でも若山牧水は恋人と訪れるほど気に入っていたようです。
 結局その恋は実らず、後にこの地をひとりで訪れ、歌集『独り歌へる』を発表します(未練がましく思えますが、失恋を肥やしとしたのでしょう)。

 この地の来客層は年齢的に高めと思いますが、皆さんあの急坂を登って来るのだろうか?
 施設自体も斜面に造られているため階段ばかりですから、「いい運動になった」と思える方ならいいのですが、歩くのはちょっと大変そうです。
 園内の主な施設付近はバリアフリーになっていますが、介添えの方が大変そうな傾斜地です。

 一方子ども向けのサービスとして(?)、展望台裏の雑木林には「おちばたき会場」とされる一画があります。
 一瞬大丈夫? と思いましたが、林の中でのたき火を許可するからには、防火設備が整っているのでしょう。
 開けた場所のたき火もいいですが、林の中で行われるたき火の合間に、現物を前にした雑木林のレクチャーができれば、生きた知識として伝わることでしょう。


 百草園の門を出た正面に「百草ファーム(牛舎)はこちら」との地図を見かけ、帰りも無粋な坂道を下るのはつまらないので、誘われるままに歩いていくと、来てよかったと思えるのんびりとした里山の光景が広がっています。
 しばらく宅地造成された住宅地を下りますが、傾斜地には栗林が、平地の広い場所には農家の建物があるなど、土地の利用が区分が見てとれ、その生活区域内にテニスコートほどの牛舎があります(家畜は人のそばで暮らします)。
 真夏日に牛たちはみなダラけて寝そべっているので、お腹や乳の様子が立ち姿とは違いダラーっと広がっている迫力には、ちょっと圧倒されました(舎内は暗いため写真は撮れません)。

 そんな里山の谷筋(谷戸)から「駅近道」とされる切り通しを抜けると、普段見慣れた光景が広がっているのですが、世界が変わったと感じるくらいのギャップを体感できます。
 わずかな時間でしたが、里山の空気を味わいながら気持ちよく歩いて汗をかけました。


立川公園付近(Map)

 河川敷のガラクタ置き場のような場所に、人が群れているので近づいてみると、ここはバイクトライアルの練習場で、子どもからオッサンまで幅広い年齢層が集まっています。
 バイクトライアルとは、自転車に乗って岩場等の障害物を足を着けずに越えられるかを競う競技で、常に立った姿勢でこいでいると思ったら、自転車にはサドルがありません。

 後輪で立ち上がる、犬の「チンチンの姿勢」のような姿を目にしたことがあると思いますが、あの姿勢でハンドル位置が高いとじゃまになるため、ハンドルの高さは極限まで低く設計されているそうです。
 脱線しますが、気になったので「チンチンの姿勢」の由来を調べると、「鎮座:どっしりと構えるさま」に由来するそうです。期待を裏切りました?

 基本的に障害物には高さがあると思うので、運転者が恐怖感を克服しいくら防具を付けていても、不安定な姿勢からコケたら痛かろう、と思ってしまいます。
 でも、コースをクリアした瞬間の快感が忘れられないのでしょうね……

0 件のコメント: