2016/09/05

「気の流れを」取り戻した──代沢

2016.8.13【東京都】──「目黒川を歩く_9」 北沢川_6

 今回は北沢川を、小田急線 梅ヶ丘駅から烏山川と合流する池尻大橋付近まで歩きます。




小田急線 世田谷代田駅付近


 上は、小田急線 梅ヶ丘駅方面の高架から、地下に入る線路上に整備された世田谷区立 代田富士356(みごろ)広場。以前は橋で越えた背後にある環七通りの地下を通る。
 工事前の線路左側には「複々線化用地」の看板が並び、徐々に陣地を広げる状況で、隣接のアパートはいつまで頑張るのか? と眺めたが、もう場所も分かりません。
 環七の鉄道橋撤去後、付近に架けられた人道橋の富士見橋は、名の通り西側に展望が開ける丘陵地の端に位置します。富士山の眺望は良好らしいも、線路の先に見えるため乗客は気付きにくかったようです。
 現在も印象が変わらない環七脇の丘には、右の代田八幡神社があります。


北沢川緑道

 弥生時代の人々が、北沢川を見下ろす南斜面を選んだように(遺跡が残るらしい)、魅力的な環境は現在も人気が高いようです。
 暗きょ上に整備された北沢川緑道の環七下流側に作られたせせらぎは(1996年)、地域のシンボル的存在のように見えます。川にはふたをされましたが、流れの上ならではの「憩いの場」となっています。

 右は円乗院境内に保存される、空襲で焼かれた高野槙。存在感には、ただただ祈りたい気持ちに……

 付近には、斎藤茂吉(短歌誌『アララギ』)、菊田一夫(『君の名は』等)など多くの文士が暮らしたことから、緑道付近は北沢川文学の小路とされます。
 右の代田の丘の 61 号鉄塔下には、詩人 萩原朔太郎の家があり(昭和 8年頃)、娘の小説にも描写されたことを含め、世田谷区の地域風景資産とされます。
 鉄塔でも、作家や作品への思い入れにより情景として記憶される感覚は、理解できるところです。
 彼の作品に接したと思うも、映画『世界の中心で、愛をさけぶ』の朔太郎(萩原に由来)しか浮かびません……

 北沢川緑道がシャレて見えるのは、自治体の町づくりに住民が賛同し、その気になって協力した成果と言えそうです(共通の認識を持つまでは大変だったと思う)。
 デザインというものは個性の表現なので好き嫌いはあっても、工夫が感じられる家が並ぶ光景からは、町の活気のようなものが伝わってきます。
 その原動力は「気=エネルギーの道」である川の流れを取り戻そうとした住民たちの地域力による、という気がします。

 上の、川に下る南斜面の上には、気取った高級住宅が散見されますが(右のような外国風を目指す住宅など)、もう一段上の丘陵地には、昭和初期の高級分譲地「清風園」の歴史を残す邸宅が並びます(付近には、元首相の佐藤栄作、竹下登、東条英機が暮らした)。
 上記に関心は無いも、「代沢=代田・北沢付近」程度の認識から、概略程度は理解できたので、それで十分です。

 北沢川緑道を歩いて楽しいのは、緑道を大切にする付近の人々の気持ちが、部外者にも感じられるからでしょう。


 ここは左 烏山川、右 北沢川の合流地で、双方のせせらぎも合流し目黒川へ向かいます。
 この場所で感じた、左 庶民の川辺、右 富裕層の散歩道というギャップは、流れが接する丘陵地の高さの違いによるのでは? と。
 右が接する丘陵地は、神田川や渋谷川に接する分水嶺の高台でしたが、左は目黒川水系中心の流れのため、流路は長くても分水嶺を意識するのは水源付近(烏山)だけです。
 水系内の流れは内部の丘陵地を浸食するため、左右の流れに挟まれた真ん中の高台は両側から浸食されてしまい、見晴らしは望めなくなります(左側にはもう1つ支流がある)。
 富士山は望めなくても眺望のいい土地が人気なのは、庶民にも理解できるところです。


追記──後付けになりますが、旧下北沢駅の写真の紹介です

 本編の調べ物で、旧下北沢駅への愛情を感じるような写真を目にし、懐かしく感じ紹介したいと。


追記──年々拡大する台風被害

 影響を受ける台風の数は年ごとに変化しますが、近ごろは年々被害が甚大になる印象があります。今年は日本近海で発生する台風が多く、上陸時に勢力が衰えず多大な被害をもたらしました。日本近海の海水温が高いためとされると、一概に言えないにせよ、温暖化の影響と考えたくなります。
 パリ協定(気候変動枠組条約締約国会議:COP21)を米国・中国が批准しましたが、発効されても効果を実感できるまでには数十年という時間が必要になり、それまでは近ごろのような台風の季節が続くかも知れません。
 自分はその成果を見届けられるのか? と、身近な事象に対して初めて「限られた時間」を意識し、これが「次世代に負の遺産を残さない責任感」かと、思い知りました。
 でも、リニア新幹線には乗ってみたいので、計画通りに建設されますことを……

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