2016/03/07

記憶の上書きが可能な町──新宿

2016.2.13【東京都】──「渋谷川水系を歩く_1」

 今回から、現在再開発中の渋谷駅ビルの地下を流れる渋谷川水系を歩きます(再開発に伴い流路が変更されるそう)。
 現在の渋谷川が、渋谷駅前の宮益橋(穏田川・宇田川合流地点)から天現寺橋までの2.6kmとされるのは、古くから各流域に伝わる名称を残そうとする配慮ではないか(ここでは渋谷川を総称とします)。




新宿四丁目(旧旭町:あさひまち)


 以前ドヤ街だった一画(戦後は連れ込み宿が並んだ)では、いまも簡易宿泊所を続ける宿や、リニューアルした施設が営業中です(上は比較的安価なデザイナーズホテルのよう)。裏路地に息づく新宿らしい猥雑さには、再開発もどこ吹く風とのバイタリティが感じられ、懇意になりたくないも応援したくなります。

 渋谷川本流とされる旧穏田(おんでん)川の水源は、付近の天龍寺や新宿御苑の池など複数あるらしいも、谷幅の狭さから水量は少なかったようです(江戸時代には玉川上水の余剰水が流され流量が増えたそう)。


新宿御苑

 2012年リニューアルオープンの新宿御苑大温室は閉館が早く、何度も入れずでしたがようやく「あったか!」とゆるめました。
 この施設に欧米系の旅行者が多いのは、気候・環境が珍しいためか?(アジア系は少ない)

 下の早咲きの桜に目をとめた旅行者には、「次は是非、ソメイヨシノの季節に!」と、広報担当のようなアピールをしたくなります。
 爆買い商品のクオリティも自慢ですが、「桜の季節こそ!」と胸を張れる時季は、もうすぐです……



鳩森八幡神社(はとのもり)


 境内の「千駄ヶ谷の富士塚」は建造当時の場所に残ることから、都の有形民俗文化財とされます。当時の江戸からよく見えた富士山が信仰の対象とされ、山での祈りをかなえられない人々が、代用の富士塚を信仰する気持ちは理解できます。
 隣接する将棋会館(日本将棋連盟)は、公式戦やタイトル戦が行なわれる施設。館内の道場は1日一般1,000円で、大人と対局する子どもの姿に、いつか羽生善治名人に挑戦する棋士が育つことを。

 千駄ヶ谷の名称は、付近に群生した萱(カヤ)を、一日に「千駄(駄は馬に積む荷の重さの単位)」積むことに由来するそうで、谷じゃないんですって。
 江戸開城により徳川宗家は千駄ヶ谷に移り、篤姫はこの地で亡くなりました。


神宮前二丁目〜北参道


 渋谷川支流とされる旧原宿川沿いの通りには、ウインドウショッピングや散策が楽しいシャレた雰囲気の店舗が、北参道方面へと続きます。
 ですがそんな地域も、終戦直後は都内屈指の「温泉マーク街」(懐かしい表現)とされたそうで、所々に残る古い建物に息づく生活感からは、世代交代を含む「地域更新」は始まったばかりとも。
 そんな地域再生を後押しするのが、以前の記憶が上書きされても「仕方ない」とあきらめ、前しか見ようとしない東京という町の「都合のよさ」かも知れません。


北参道ガード


 明治通りから明治神宮北参道鳥居に至る北参道は、表参道に対する「裏参道」と呼ばれ、裏なら大丈夫(?)と上空に首都高を通され、神聖さが失われてしまったようにも(旧原宿川もこのガードをくぐったらしい)。

 周辺を調べるうちに「代々木の非人頭(ひにんがしら)」に目が止まります。
 非人とは乞食のことで、地方(付近では甲州街道)から入り込んだ浮浪者を、幕府から任命された非人頭が非人溜に収容し働かせ、その上司に穢多(えた)頭(広範囲の被差別民統轄)を置き、江戸の秩序を保ったらしい。
 よそ者が切り開いた歴史の浅い江戸では、役割分担として受け入れたようですが、歴史を重ねた関西の差別意識には、容易には揺るがない根深さがあると感じます。


南新宿


 小田急線利用者の多くが、通過する車内から眺めるだけの南新宿駅(新宿のひとつ手前)では、「イメージ通り!」に迫る高層ビル群を、反射的に見上げてしまいます。
 無抵抗な地域に迫る理不尽さはあるが、位置関係から日陰にならないだけましとも……

  文化学園付近を水源とした旧原宿川は、神宮前で合流する旧穏田川より谷幅が広いことから、元は本流だったかも知れませんが、いずれにしても、下流域の耕作地をうるおしたのは玉川上水からの配水によるようです。


追記──「なでしこジャパン」から澤が去り……

 足が地に着かない状況を改善できるのは、監督?(責任は監督にあるが) グラウンドに立つチームリーダー? 一般的には各ポジションのリーダーやキャプテンの責任が問われるも、今大会では全員が「指示を待つ甘えん坊」のように突っ立っていました。
 実績を重視したメンバー選考にもかかわらず、「澤の名前」を欠くことで崩れるチームならば、根本的な再構築が必要になります。
 その裏(?)で行なわれた、卓球女子「世界選手権団体戦」では、キャプテン福原愛や石川佳純が、若手を「千尋の谷」から引きずり上げて決勝まで勝ち上がりました。決勝で敗れても若手に厳しい経験をさせる「若手育成」の姿勢は、将来につながるはずです。
 いまさらですが、愛ちゃんのうまさに目を見張りました……

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