2017/06/05

道が町を生む──用賀

2017.5.20【東京都】──「谷沢川を歩く_1」

 今回から、東京農業大学(世田谷区桜丘)付近を水源とし、等々力渓谷に流れ込む谷沢川を歩きます(用賀までほとんど暗きょ)。





 ここは、JRA馬事公苑門前にある東京農業大学の施設(大学も隣接)。両者はベストマッチな関係に思えますが、馬事公苑は1934年(昭和9年)帝国競馬協会が土地を購入したもので、一方農大は現青山学院大学の地から、戦後の46年(昭和21年)陸軍機甲整備学校跡地への移転なので、共通するのは「田舎に引っ込んだ」というあたりか。
 上は、温室のバイオリウム(生きもの空間)で放し飼いにされるイグアナ。
 現在、馬事公苑は東京五輪に向け改修工事中です。


桜丘(さくらがおか)、上用賀

 付近の高台は、目黒川支流の烏山川蛇崩川や、呑川との分水嶺ですが、谷沢川方面の湧水は少ないため、付近の品川用水(玉川上水の分水)から分水を受けていました。
 後の水利権争いにより分水は止められますが、漏れ出す水をいくつもの溜池に集め農耕に利用したそうで、ざるで水を管理することで黙認していた、大らかな時代だったようです。

 現在も生産緑地保護のおかげで、地域の原風景を思い描くことができます(右は農家の屋敷林)。


 関東大震災の後、被害が少なかった高台への人口流入増を受け、当時の玉川村では耕地整理が行われ、その事業費捻出のため馬事公苑の土地が売却されたそう。
 おかげで世田谷とは思えない碁盤状の区画に整備されますが、整然と並ぶ住宅街には目印がないため、用賀条通り(一〜十条)として道案内するようになります。
 大山街道と世田谷通りの間を、京都とは逆に北に向かって数を重ねるのは、地域の中心は大山街道との思いによりそうです。上はファミリー農園。




 東急田園都市線 用賀駅から砧(きぬた)公園内にある世田谷美術館への道は、いらか道として整備され一部が谷沢川暗きょ上を飾ります。テーマロードとしては長く、装飾が淡路瓦(グレー)で統一される姿にはシックな印象を受けます。
 道沿いに点在する店舗にも、イメージ活用を工夫する姿勢があるため、道が町を生み出した街道筋のようで、町づくりの参考になりそうと。


用賀一条通

 用賀は、江戸時代まで大山街道(矢倉沢往還:旧東海道本道 )の宿場町(眞福寺の門前町)で、江戸期盛んになった大山講(大山阿夫利神社詣り)でにぎわいます。
 その先の矢倉沢(箱根)を越えれば富士山に通じるが、富士講は富士みち(甲州街道)を利用したらしい。
 土地柄からすれば大山講支持派が多そうですが、多摩川を見下ろす高台からの景色では、どうしたって富士山が目に入るため、両方拝んでいたのでは?

 山号の「瑜伽(ゆが)山」が地名由来とされる眞福寺前の道が、用賀一条通とされます(右は通りに面した無量寺:用賀観音)。




 旧玉電車庫跡地に、1993年世田谷ビジネススクエア(東急による28階建てのオフィスビル)が開業します。
 いくら意気込んでもバブル乗り遅れ組の郊外ビルなので、当初掲げられたサン・マイクロシステムズのロゴ(スマホ等で利用されるJavaを生み出した→現在Oracle)を目にし、相当家賃を叩かれたのでは? と感じたことも。

 三軒茶屋キャロットタワーと共にランドマークと認識するのは、「世田谷に高層ビルは似合わない」と感じるためではないか(ビジネス拠点の広がりは悪いことではない)。上は用賀駅の階段。右はビル地下の水辺。


追記──ビール値上げ?

 「安売り禁止令」は、日々同じ商品なら安い店を探す消費者に対し、インフレ(高い)商品を買えと強制されるようで、気に食いません。免許制の酒屋保護は分かるが、他の業種を守らずシャッター街で酒屋だけが元気ってのは、おかしな光景になりそうです。
 ビールの値段は3%程度高くなり、これで消費税が上がったらどうなるのか?
 輸入ウイスキー価格が変わらない店の誠実さ(?)を、応援したいとも……

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