2018/01/08

変われない町?──柴又

2017.12.16【東京都】──江戸川区探訪_9(葛飾区編)

 変わらないで欲しい町では、記憶との符合に懐かしさを覚えるが、将来展望が開けない状況に接すると、それは変われない町の姿のようにも……



 駅前に寅さん像(1999年)を見送るさくら像(2017年)が設置された様は、まさに映画のラストシーンのようで、像の間には兄妹の絆と寅次郎の性(さが)を共有するゆえの痛みが感じられます。
 映画のエンドマークを目にした瞬間、次回作に思いを馳せる観客の気持ちがそのまま形にされたかのようで、山田洋次監督の協力はあっても、観客の思いから生まれたように。
 絵になる存在であってもここには幕が下りないため、残像ではなく実在の像に対して感情移入することになり、映画とは違うリアルな印象が残ります……




 帝釈堂裏に彫られた波の彫刻(大正〜昭和期)は四代目 武志伊八 信明によるもので、初代(江戸時代)は波の伊八(波を彫らせたら日本一)と呼ばれ、葛飾北斎が神奈川沖浪裏等の波描写の参考にした、との説明が聞こえてきます。
 この彫刻も柴又の魅力ですし、川甚の料理は以前から評判でも、寅さん人気の恩恵を受けてきたわけで、人気先細り対策としてさくら像を設置したように、寅さんを外せない町の新たな目玉作りは、とても難しいテーマのように……



 木を雪から守る機会はなくても、新年を迎えるための装飾として見事な季節感と。
 ここは、浅草のカメラ部品工場が関東大震災被害を受け移転した地に残る屋敷で、現在は葛飾区が管理・公開し、抹茶などの喫茶サービスがある。

 隣接する寅さん記念館にはお約束のように入ったが(3度目)、眺めるだけで通り抜けてしまった。
 駅前にたたずむ2人の像がすべてを語っているため、共演者やセット等の展示は引き立て役に見えてしまいます。




 観光客でにぎわうも、川向こうには土産物店しかないようで、対岸の人影も引き返してきます。韓国・中国からの観光客を見かけるように、この情緒には通じるものがありそうと(渡しは個人の運営)。
 演歌『矢切の渡し』は、ちあきなおみ盤がオリジナルで、その後、細川たかし、瀬川瑛子 等が唱い、細川盤シングルが最も売れるも、有線ではちあきの人気が高かったそう。

 江戸川は千葉県との県境で、対岸の松戸市も下のような並木を整備するなど、川を渡らせるためにアピールするようです(東京側からの眺めがいい)。





 取水塔を眺めるうちにハタと、西葛西(江戸川区)の上水はここから給水されたもの? と緊張が走ります。以前の「日本一まずい水道水」の記憶があるためですが、1992年からオゾンによる高度浄水処理を開始し、不名誉払しょくのためボトルウォーター東京水を販売するなど、税金(水道料金?)を使い宣伝しています。
 給水地域Mapで、多摩川水系と思っていた田町の水も(多摩川水系もいいとは思わないが)江戸川水系と知り、ちょっとショックを(23区のほとんどは、利根川・荒川水系から取水)。考えても無駄なので、慣れろ! ということらしい……


 柴又の将来について語れる立場ではないが、『東京物語:小津安二郎監督』の尾道での撮影を若かりし大林宣彦監督が見学し、その体験から後年、尾道=映画の印象を再構築したと考えれば、近い将来、寅さんの撮影を見て育った若い世代が、盛り立ててくれるかも知れないと……

 わたしは、洗練されない田舎そば風+しょっぱいつゆ(褒め言葉のつもり)の、やぶ忠のせいろ目当てに足を運びます。


年末年始に足を運んだ神奈川県スポット

 2010年に倒れた鶴岡八幡宮の大イチョウ(樹齢1000年とされる)の若木は順調に育ち、小振りな枝を広げる姿が見られるようになるも、参道の段葛(だんかずら)は改修され(2016年)、味も素っ気もない姿となりました。
 崩壊しそうな石垣が交通を妨げないための予防策らしく、常に交通渋滞する排気ガスの影響を受けた桜やツツジも全部植え替えたので、以前の面影どころか、新しい参道? のように見えます。
 こちらも見栄えするまでには時間がかかりそう。

 江ノ電車内の若い観光客は中華系の言葉を口にし、みなゾロゾロと鎌倉高校前駅で降りていきます。
 海に面した踏切周辺は、アニメ「スラムダンク」の聖地とされ、台湾での人気は衰えていないらしい。
 観光地でなくても、ちょっとした景色や場所が人気となる「インスタ映え」は、町おこしにならなくても地域の明るい話題(?)にはなりそうと。

 近ごろは、展望灯台を江の島シーキャンドルと呼ぶそうで、ルックス的にいいネーミングと。


 湘南海岸サイクリングロードは、自転車・ジョギング・散歩に人気の散策路ですが、整備負担の重さが見て取れる状況に遭遇します。
 鵠沼〜辻堂間はほとんど砂に埋もれ(年始から除去の予定)、茅ヶ崎のボードウォーク周辺は、2017年の台風被害で崩落し(リンク先YouTube)通行止めの状況です。
 前回整備でも大規模な工事が行われたが、主因は相模川からの砂の流出(供給)量減少によるもので、それを改善しなければ同じことが繰り返されます。
 砂浜(陸地)を守ることは国・自治体の使命ですし、経費を節約できる方法を探るべきかと。


 新年に限らず横浜中華街が放つ「ハレ」の空気感には、豚まん片手にブラブラしたくなる吸引力があるように(右 媽祖廟:まそびょう)。
 無視できないにぎわいを生み出す活力が華僑のバイタリティならば、日本人も対抗できるポテンシャルは持っているので、世界中にJapan Townができるように思うが、近ごろ繁殖力が弱っているようにも……


追悼──星野仙一さん

 現役の戦士時代は熱くなって当然ながらも、あまりいい印象はなかったが、指揮官になってから持ち味が発揮されたように感じます。
 記憶に新しい2013年東北楽天 日本シリーズ最終戦では、前日160球投げた田中将大投手を最終回に登板させる、星野監督らしさで盛り上げてくれました。
 プロ野球を熱くしてくれた「勝ちたいんや!」の気持ちを選手たちが胸に刻めば、熱い戦いが続くはずです。
 ありがとうございました。

0 件のコメント: