2019/11/25

「住みたい街」首位陥落──吉祥寺

2019.11.9【東京都】──地下鉄 東西線を歩く_51

 吉祥寺の混雑感は、人出の多さに加え、狭い道でよしとする都市整備の問題と感じるも、「これが吉祥寺」とあきらめる空気感も理解しています……



 中央線高架の巨大な構造物のおかげで、駅周辺や住宅地に踏切がないため線路を意識せずに往来でき、快速電車はかっ飛ばすことができます(地上駅の荻窪の地下通路を面倒と感じたりも…)。
 上の、西荻窪西側の高架下には建物が並び、事務所や倉庫等に利用されています。右側の土地を駐車場にできるようで、騒音を我慢できれば使い勝手はよさそうです。
 快速電車は低層住宅地に面した高架をかっ飛ばすため、かなり離れた場所まで走行音が聞こえますが、それが中央線沿線らしさなのかも。
 右は、建設資材店(材木)の事務所。


 吉祥寺は、江戸時代の大火で水道橋付近を焼け出された人々が集団移転した町で、氏神も移転し武蔵野八幡宮とされます(町の中心だった吉祥寺は駒込に移転)。周囲の寺院も八幡宮周辺に移転し、四軒寺(しけんでら:安養寺、光専寺、蓮乗寺、月窓寺)の名が残ります。右はまっすぐなイチョウが立派な安養寺。
 近くのビル屋上にあるバッティングセンターは健在です。
 上は、吉祥寺駅前からアーケードが続くサンロード商店街の終点で、こちらからのアプローチは少ないため、こんな看板があったのかと。


 駅前ロータリーには、井の頭自然文化園で1954年から飼育され2016年に亡くなった、アジアゾウ はな子の像があります(69歳は国内最高齢)。近所で育った多くの子どもたちが会いに行ったのでしょう、様々な思いが込められているように感じます。
 育った町に愛着を持つ人の多いことが「住みたい街」として人気が高い理由であれば、住民にとって喜ぶべきことではないかと。


 吉祥寺には、「さとう」のメンチカツ(1個240円!)、ハモニカ横丁、焼き鳥の「いせや」など、庶民的な人気店があることも大きな魅力です。
 上の行列ルールは浸透しており、商店街の通行を妨げないよう通路をあけて広い場所に整然と行列ができています。
 ここに限らず「並んで買う気には…」と思うので素通りしてきましたが、何十年も変わらない光景を目にすると、一度は食べてみたいと。でもこの行列だとどれくらい待つのだろうか……


 いせやには一度入ったことがあり、店の雰囲気に馴染めて楽しかった記憶があります。煙やにおいは近所迷惑かもしれないが、1928年(昭和3年)精肉業として創業、58年焼き鳥店に転換した実績から、なかなか文句も言いづらいかも。
 飲んべえはそこに誘われるので、閉店の22:00まで勘弁してください!

 吉祥寺には多くの魅力があることから人気の高まり、地価が高騰し手が届かない地域になったため「住みたい街」首位の座を明け渡したとのこと。相続税が高くなるだけとしたら、住民には単なる迷惑のように……(井の頭公園は次回)

2019/11/18

東京女子大学「VERA祭」

2019.11.9【東京都】──地下鉄 東西線を歩く_50

 前回の善福寺公園訪問時に、隣接する東京女子大学の大学祭「VERA祭」が開催されると知り足を運びました。


 1910年キリスト教世界宣教大会の決議により、北米プロテスタント諸教派の援助を受け開設されたそうで、大きな期待を背負っていたことは、建造物の素晴らしさからもうかがえます。1918年(大正7年)の開学には、初代学長 新渡戸稲造、2代学長 安井てつが尽力したそうです。
 VERA祭とは、新約聖書の「QUAECUNQUE SUNT VERA:すべて真実なこと」による。

 前回訪問時は遠慮がちでしたが、今回は女学生たちから笑顔で声をかけられ浮かれて歩くも、あれは健康的な(?)呼び込みなんですよね……


 1938年(昭和13年)建設のチャペル(上)には、信仰心を持たない部外者も感心するばかりです。ステンドグラスに期待する絵柄がないのはプロテスタント教会(偶像や装飾を排除)のためで、信仰に必要なのは「光」ということらしい(毎朝礼拝が行われる)。
 下のパイプオルガン(1991年設置)によるチャペルコンサートが開催されるそうで、ここに限らずいつか生演奏を体感してみたいと。
 外国人旅行者が寺社に関心を示すように、信仰しない者でも祈りの場に対する認識を持っておくべきと。


 右の、木造の渡り廊下にあるトラック等が通る高い屋根に、声を上げてしまいました。まだ木造校舎があった小学校低学年時分の記憶がよみがえり、しばらくウロウロ眺めていました(渡り廊下にある外履き用の通路表記など無視して走り回った記憶があります……)。

 大学の方針と思われる「清廉さ」というものは、われわれの子供時分までは「目指すべきもの」のひとつだったことを思い出し、心苦しく振り返りました。
 美徳に対する意識はそれほど変わらなくても、道徳意識の希薄化を再認識させてくれる施設群と。

 右は、創立時の理事オーガスト・カール・ライシャワー一家が暮らした建物で、現在は外国人留学生の交流の場とされます。1905年宣教師として来日し、18年本学を設立し代表となり(新渡戸稲造は学長)、終戦後の帰国中に日本から勲章が送られます(この政府の姿勢は素晴らしい)。
 その名と時代が一致しないのは、彼の次男で駐日米国大使を務めた(1961〜66年)エドウィン・オールドファザー・ライシャワー(リンク先の画像はひどいが、日本語の挨拶は素晴らしい)と混同するためですが、現在も好印象を持つ日本人は多いように(散策する様々な場所でライシャワーの名をよく目にします)。

 右は全面芝のグラウンドで、目にした瞬間「歩きたい!」と足が動き出します。芝がキレイなのは、体育の授業がない? ことや、運動系のクラブ活動が限られるためかと。ラクロス部の模擬店を見かけましたが、ダンスサークルのヒラヒラに引かれる女子の方が多そう。
 いまどきミスコンは観客動員の目玉ですが、「いい男を呼びよせたい!」ではなく、掲示板で目にする「女性学」等の一環として、大学側も認めているのかも……

 プロテスタントの、「聖書以外に頼るものなし」という清貧さを表現するようなキャンパスは、とても魅力的と感じました。


追記──TVドラマ「少年寅次郎」終了

 車 寅次郎の幼少期の物語なので発展性はありませんが、原作は山田洋次「悪童(ワルガキ)小説寅次郎の告白」ですから、のちの寅さんにつながるエピソードが散りばめられており、それを味わうことは新たな発見なので、とても楽しめました。
 寅次郎役の子役たち(2人)が、渥美 清さんにつながる存在感を見せる姿には感服させられたし、さくらが幼少期から兄を慕う姿には、倍賞千恵子さんにも負けない健気さがありました。
 山田洋次さんが映画では難しいため著作とした物語は、TVドラマとして山田さんの目の黒いうちに実現できたことで、作品の完成度を高めたように。
 本作も当然、柴又駅での別れで終わることになりますが、その場面が「To be continued…(つづく)」の意味だったことに、初めて気づきました……(最後の作品にはなかった気がします)
 つづきである、第1作が無性に観たくなりました!

2019/11/11

武蔵野のオアシス──善福寺公園

2019.11.2【東京都】──地下鉄 東西線を歩く_49

 善福寺公園は駅から遠く少し不便な立地ですが、武蔵野のオアシスのような空気感に引かれ足を運びたくなります。



 西荻窪駅は、にぎやかな荻窪駅と吉祥寺駅に挟まれるため、大規模店舗が参入しにくい地域らしく、商店街の裏にはすぐ住宅街が広がります。上は、そんな町に求められたような着物のリサイクル店。

 右の坂の上のけやき公園は、以前の畑が宅地とされる計画を知った住民たちが署名運動を起こし、大木を含む土地を区が買い取り整備した施設。
 すぐ奥の坂下にある善福寺川からは目立つ存在で、カメラ背後に「けやきの見える家」の看板を出す家があるように、多くの人が愛着を持つ地域のシンボルのようです。

 先日の台風・豪雨以来、しばらく善福寺川の水位が高かったそうで、湧水量は減っても生きている地下流路から水が流れ込んだためかと。神田川を含め流域の氾濫を防いだのは環七地下調節池 等のおかげと思われますが、川の高水位が続いたのは土壌の保水力によるものと。
 キャパは当然あるも、支流を含めた流域の保水能力は、ある程度の雨量なら持ちこたえられそうと感じます。
 地表を雨水が浸透しない構造物で覆ったため、地下の調節池が必要となったように、対処のためにお金をかけていては、いくらつぎ込んでも足りないのではないか……

 武蔵野三大湧水池とされる善福寺池(井の頭池、三宝寺池:石神井公園)ですが、現在上の池・下の池に分かれ、地下水をくみ上げ維持しているそうです。
 水辺のある公園は子どもたちがよろこびますし、年配の方にも水面を眺める日向ぼっこが人気の地は、駅から遠く訪問者は近所の方に限られるため、武蔵野の雰囲気をゆっくり楽しめます。
 下の池はアシなどの植物が多いが(右)、上の池(下)の水面は開けるなど環境が異なるため、野鳥の種類も違うように見えます。


 上は倒木の枝で休むサギ(と思う)の姿で、この右側の島には市杵島神社(いちきしまじんじゃ:江ノ島弁財天を祀った水の神)があり、社の周辺にたたずむ鳥たちは、神様の使いのように見えたりします。
 源頼朝が掘ったとされる遅野井(おそのい:水の出が遅いと弁財天に祈った)の守り神とされます。


 以前の訪問時に開催されていた、国際野外アート展『トロールの森』が明日から開催のため、準備作業が行われています。会場も、杉並区立桃井第四小学校、西荻窪〜善福寺周辺店舗・ギャラリー 等、町を巻き込む催しとして定着しています。
 自由なアート展というのは、期待せず気軽に見学でき、思いがけない発見があると得した気分になれるので、ブラブラしてみると結構楽しめたりします。
 トロールとは北欧に伝わるいたずら好きの妖精で、物がなくなると「トロールのいたずら」と言われるそう(ムーミンはムーミントロールの名を持つ)。


追記──天皇即位祝賀行事

 上皇后美智子さんが目指した「開かれた皇室」のおかげで、令和天皇の姿は浩宮時分からメディアへの露出機会が多いため国民にも浸透しており(当人はプレッシャーだったことと)、「彼なら大丈夫」と信頼する人が多いのではないかと。
 美智子さんの努力は見事に功を奏し、スムーズに継承は行われましたが、60歳から天皇というのは大変そうと……

 「天皇陛下万歳」からは、戦争や北朝鮮の体制を想起するので、なんとかならないだろうか……

2019/11/04

駅前は誰のもの?──西荻窪

2019.10.26【東京都】──地下鉄 東西線を歩く_48

 西荻窪駅周辺は、生活には便利ながらも窮屈な印象があり、少し離れた住宅地に接する店舗のゆったりした雰囲気に魅力を感じるのは、時代の感覚という気もします。


 荻窪駅北側は闇市から発展した庶民主権の町で、東側の荻窪銀座商店街にはアーケードが残ります(荻窪中華そば春木屋はこの付近)。女性は引きそうなルックスですが、メニュー&値段は魅力的に見えます。
 西側にはルミネタウンセブン西友があるので、ひと通りの買い物はできそうです(付近も闇市だった)。映画館の旧荻窪オデヲン座もこの付近でした。
 右は駅北側に伸びる教会通り(←リンク先にこの店の写真があった…)のクリーニング店。下は飲み屋の飾り。
 付近で夜のお勤めらしき女性を多く見かけるのは、新宿周辺に通いやすいためか?


 右の神明(しんめい)天祖神社は、戦国時代に移り住んだ伊賀(三重県)の農民が、伊勢大明神(天照大神 あまてらすおおかみ)を祀ったもので、のちに紀州徳川家の領地となり、阿佐ヶ谷を含め伊勢信仰が定着したように。
 10月15日の例祭に行われる、かがり火を焚いた里神楽(民間人による神楽)は評判らしく、祭を終えたばかりの境内は、大掃除後のようにスッキリしています。
 以前付近には、桜の木を植えた「桜の馬場」があったそうで、周辺の地に巨木が健在な様子からも地域の中心だった名残がうかがえます。

 下はベルク・バイオリン工房で、リンク先に初心者セット 10万円前後、おすすめ 30〜100万円程度(新作・中古)とあり、素人が想像できる範囲内と。
 そこで目にした分数バイオリンとは、子供用サイズのことで(6サイズある)、使用期間が短くても買い替えは必要ですから「レンタルないの?」と思うも、それでは身が入らないかと……

 右は赤サビをまとうような鉄板で覆われる建物(一般の住宅らしい)。住宅街から行儀のいい印象を受けるのは、同時期(高度成長期?)に建てられたためか?


 西荻窪駅正面にある南口仲通街(右)は、間口が狭く、長さも100m程度のごちゃごちゃした商店街ですが、駅への通路なので人通りはあります。
 アーケードに吊り下げられるピンクの象(3代目)は、神輿を担げない小さな子供達が山車として引けるよう作られたもので、ピンクとされたのは、祭りで使う赤・白のペンキを混ぜたためらしい(初代は黄色だったそう)。
 足にしがみついている仔象には「にしぞう」という名前があるらしい。
 以前西荻には5軒の映画館があったそうです。

 西荻窪駅は、高円寺駅、阿佐ヶ谷駅と同時期に設置されますが、駅周辺には当時の区画がそのまま残されるように見えます。南口の小規模店舗が軒を並べる一画は、高度成長期の労働者には欠かせない空間で、わたしも引かれる中央線沿線の雰囲気が健在ながらも、公共性を考えると区民の利便性も考慮すべきと。
 狭い道路にバスを通したため、一方通行でもスムーズに走れない道路状況に、整備すれば車が増える心配はあるとしても、バスは通してあげたいと。
 折しも、1966年に決定した道路拡張計画が動き出したそうで、周辺地区は動揺しているようです……


追記──首里城炎上

 勢いよく燃える姿を目にし、ショックを受けました。
 沖縄の人々の落胆は想像以上と思いますが、「燃えたものは仕方ない」「早く再建したい!」との意欲には、戦争で焼失した首里城の姿を重ねているようにも感じられます。
 支援の輪が広がり、多くの人々の気持ちが再建につながったとしたら、「沖縄をなめきった国の姿勢」とは違う、国民主体の一体感が生まれるのではないかと……


追記──ラグビーW杯2019閉幕

 44日間という長さを感じなかったのは、毎週末の盛り上がりを楽しみに一週間を過ごせたからではないかと。
 今大会の成功から「Tokyo2020もこうすればいいのか!」の自信を得たので、今回以上の「おもてなし」で盛り上げられそうと。
 前回大会日本のヘッドコーチだったエディ・ジョーンズの印象は良かったが、準優勝のイングランドに引き抜かれたのでは仕方ないと感じたように、今回のジェイミー・ジョセフが引き抜かれたとしても、次回大会も、新たな勇姿を見せてくれることを楽しみにしています!