2015/09/07

人が流れ込む旧川筋──旧石神井川

2015.8.29【東京都】──「神田川を歩く_33」

 今回は、かなり昔に流路が変わり水路は途絶えるも、地形に痕跡を残す旧石神井川(不忍池に至る谷田川)沿いの王子〜駒込を歩きます。





 右は、標高図丸印付近の切り通しのような谷間で、以前の石神井川は南に湾曲しましたが、現在は谷を下り隅田川に注ぎます(1969年から飛鳥山地下のバイパスを経由)。
 この流路変化には「自然の力」「人為的開削」等諸説あり、江戸時代の治水対策(お茶の水付近の手掘り水路と同じ)と考えたくなるが、江戸初期にはすでに現在の流路だったとのこと。
 それ以前の資料は極端に少なくなりますが、飛鳥山の丘陵地一帯には縄文期以来の遺跡が多数見つかるように、太古から水に恵まれる土地だったようです。

 右は、足を運ぶたびに立ち寄る、旧渋沢庭園「晩香廬(ばんこうろ)」の、ゆがんだ窓ガラスからのぞいた絵ですが、ただのブレた写真のよう……
 手作りによるゆがみのため、同じものは出来ないらしいが、今どきは懐かしさから作る人がいるのではないか?
 ガキ時分にゆがむ景色を楽しんだ記憶を振り返ると、滝田ゆうさんの漫画の世界が思い浮かび、アンニュイな空気感に引かれた時分を思い出したりします。
 年代的にゆがんだ窓ガラスは、記憶を巻き戻す「トリガー:きっかけ」のようです。


七社神社


 霧雨が降る日でも開かれている神楽殿に並ぶ干支の土鈴(売れ残り?)。
 雑司ヶ谷鬼子母神でも見かけましたから、都内にもまだ根付いていそうです。
 見た目や音の暖かみに「ほっこり」するのは、土のぬくもりが遺伝子レベルで記憶されているからでは? 映画『もののけ姫』の「こだまの音」を想起したのも、なごみ系の音色として分類された記憶によりそうです……


旧古河庭園


 ここは、1917年(大正6年)古河財閥三代目の邸宅として建てられ、財産税で物納された国有財産を東京都が無償で借り都立公園として公開しています。洋風庭園のバラは有名で、左右対称に整えられた植え込みの行き届いた手入れにはいつも感心します。
 管理職員の見回りと同じルート、タイミングで歩いたので、彼のチェック項目をチェックしました。
 彼は植物担当らしく(植物オタクっぽい兄ちゃん)、葉先・枝先や根元を観察するのは、異常を見つけやすい箇所だからのようです。何度も別の株との間を行き来して比較していたのは、気になる個体だったのかも知れません。
 そんな愛情が植物から伝わり「整備された施設」の評判を広めるのでしょう。


 庭園は一枚上のような斜面を利用していますが、そこが旧石神井川に浸食されたことを今回認識しました。低い平坦面にある日本庭園は、旧河道面に位置するようです。

 今年の夏は「蚊が少ない」印象があります。
 昨年のデング熱騒動以来、防虫スプレーを習慣としますが、人が集まりやすい場所では蚊の駆除に力を入れているように感じました。
 刺されやすい体質と思っていたが、虫に好かれなくなったのは「加齢臭」の兆しか?


霜降橋

 この橋は、染井霊園付近を水源とした谷田川に架けられますが、1931年(昭和6年)暗きょ化から店舗が集まり始め「しもふり:霜降銀座商店街」となります。
 商店街は旧水路に並び、名前を変えながら「染井銀座商店街」「西ヶ原銀座商店街」と続きます。
 町は水辺に栄え、水路を新たな道路に利用できるのは便利ですから、旧川筋に人が流れ込むようになります。
 かつて旧石神井川本流の流路でしたが、途絶えた年月の長さから支流が流れの主となりました。

 昭和の空気漂う真っ赤な金魚+ホテイアオイの水槽を維持する店や、店先にパラソルを開く肉屋など、流れ込む水のごとく様々な人を受け止めるための工夫に加え、若者にアピールする飲食店も目に付きますから、「地元で事足りる」下町商店街ここにあり! の印象です。

 霜降橋周辺を調べていると、ドナルド・キーンさんの名前に目が止まります。「私は日本人」の言葉通り、初めて立ち寄った日本人でも魅力を感じる商店街を好む心は、ネイティブと変わりません。


 ここは駒込駅前メインストリートに面した銭湯(駅から3分程度)で、この町に漂う空気を表すと感じた絵。
 地下鉄南北線は開通するも、山手線沿線ではローカルな駅の印象のままですが、我が道を歩まれますことを!


追記──野球のU-18ワールドカップ準優勝

 選手たちは甲子園に続き今大会でも、試合ごとに成長していったように見えました。
 予選で勝った相手でも決勝の舞台では、前回チャンピオンが放つ圧力を相当感じたのではないか?(決勝って別ものなんだろうなぁ)
 6回満塁の1塁ヘッドスライディングで、審判はランナーを見ておらずアウトの判定とされましたが、総合力では米国が上回っていたようにも。
 夏の甲子園優勝投手も「甲子園で負けた」ことを胸に刻んでこれからに取り組み、高校野球を引っ張ってもらいたいと…… 素晴らしい戦いぶりでした!

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